ウイグル人をテロリストにする中国共産党

 引き続き、イリシャット・ハッサン・コクボレさんの著書を読んでいきます。今回は『維吾爾雄鷹 伊利夏提③ 東突厥斯坦的独立未来』P130に掲載されている「誰在進行極端宗教宣伝」です。非常に興味深い内容の体験談です。

 簡単に言うと、中国共産党の手下となっているウイグル人東トルキスタン各地のモスクを支配するだけでなく、ウイグル語訳「コーラン」の内容まで中国共産党の支配に都合がいいように書き換えていること。そして、中国共産党の手下となっているウイグル人宗教学者たちが、本来禁止されているはずのイスラム原理主義の宣伝を公に行い、アメリカや西側諸国に対する「聖戦」、要するにテロを呼びかけていることです。

 イリシャットさん自身、東トルキスタンからトルコに訪問してきたウイグル人の老人から聞いた話として紹介している内容ですから、どこまで本当のこのなのかは、私には判断できません。しかし、中国共産党なら当然このような悪質な民衆扇動をしたとしても何の不思議もありません。

 中国共産党は、おそらく日本でも似たような民衆扇動を試みていると考えてよいのではないでしょうか。少なくとも日本の新聞・テレビのようなメディアの中には、中国共産党出先機関のような報道をしているところがありますよね。

 それでは訳文です。

--------------------------------------------------------------------------------------------------
いったい誰が宗教原理主義の宣伝をしているのか?

中国共産党に支配されるモスク

 2014年5月末、子供に会うためにトルコへいったとき、私はついでに友人や同業者、そしてイスタンブールウイグル団体を訪問した。最後の数日間、あるウイグル人の友人が私に、ふるさとからやって来たある老人が私に会いたいといっていると聞いた。友人によると、その老人は人々から尊敬されている高潔なイスラム宗教学者だという。

 私はそれを聞いてとても嬉しくなった。トルコに来るたびに、ふるさとの状況について話してくれる人はいないかと思ってきたけれども、危険を冒して私に会って実情を話してくれる人は一向に見つからなかったからだ。特に私を興奮させたのは、徳が高く名声の高いイスラム宗教学者とお話しできるということだった。これは本当に得がたい絶好の機会だった。仮に故郷であったとしても、この様な機会は得がたいものだっただろう。ましてふるさとを離れて10数年の今日、しかもトルコで、となればなおさらだ。

 面会の場所は友人のウイグル料理の店だった。私たちは入り口で待ち合わせ、友人によって紹介された後、店の地下室に案内された。友人は、ここなら人は来ないから、と私に告げた。その後、友人は用事を思い出して出て行き、中には私と老人の二人だけが残された。私たちはお茶を飲みながら、お話を始めた。

 老人は私に挨拶をした後、長いため息をついてから話し始めた。

 老人が先ず私に語ったことは、現在、共産党政府は定年退職後の信頼できるウイグル人共産党員を積極的にモスクの管理会に入るように進め、モスクを支配しようとしているということだった。この様にして入ってきた共産党員がいかに敬虔なイスラム教徒を装っているか、礼拝に来る人々をどの様な言葉で誘引しているか、神学者や礼拝に来た人々をどのように監視しているのか、彼らがモスク内で話していることややっていることを毎日どのように上司に報告しているか、といった内容だった。

 老人はまた、この様な話もしてくれた。現在、中国共産党は、モハンマド・サリ・ハジム(Muhemmed Saly Hajim)が 80年代末に翻訳したウイグル語版『コーラン』の出版を停止している。その理由は彼の『コーラン』には問題があるからだという。共産党は現在、自分たちの支配下にある所謂「イスラム学者」で組織した『コーラン』翻訳委員会によって翻訳したウイグル語版『コーラン』に置き換えているのだという。

多くのウイグル人が家族全員で逃亡

 老人によると、翻訳委員会のメンバーの半分近くが非イスラム教徒であり、その他のメンバーも党に従順な「五好(政治意識が高く、思想も良く、良く学習し、愛国・愛党である者)」宗教学者だという。この翻訳委員会が翻訳出版したウイグル語版『コーラン』には、経文の中に意図的な曲解や中国共産党の意図に沿った解釈が見られ、良識のある敬虔なイスラム宗教学者にとっては困ってしまうぐらい恥ずかしいものになっているという。

 話の最後に、少し躊躇したような様子で老人は私に質問してきた。「イリシャットさん、東南アジアに突然多くのウイグル人が逃げてきた理由をあなたはご存じかな?」私は激高しながらすぐに返答した。「それは中国共産党政権が長期にわたってウイグル人を迫害し、弾圧し、虐殺してきたからでしょう。ウイグル人はもはや自分の故郷で生きていくこともできない。東トルキスタンウイグル人がいることのできる場所なんてもう無いんですよ。」

 老人は沈痛な面持ちで私をしばらく見つめ、頭を横に振りながらこう言った。「そうじゃないんだ、イリシャットさん、そうじゃないんだ。故郷の状況は私たちウイグル人もとって非常に劣悪で、共産党が無実の者を虐殺しているのはその通りじゃ。しかし、一家全員でウイグル人が東南アジアに逃亡している本当の原因はそれじゃないんじゃよ。」

 私は本当のことが知りたくなって老人に問いただした。「ならばいったい何が原因なんです?何が原因で多くのウイグル人が一家そろって逃亡しているのです?」

 老人は周囲を見渡して警戒しながら自分の座っている椅子を私の方に引き寄せてその理由を話し始めた。

奇っ怪な「移動・聖戦」宣伝

 それはおそらく一年ぐらい前から始まったのだろう、と老人は話し始めた。東トルキスタンの各城鎮に、中年と若者の奇妙なウイグル人イスラム宗教学者たちが現れて、半ば公然と「移動」と「聖戦」の宣伝活動を始めたのだという。

 彼らのスローガンはこんなものだ。イスラム教徒の聖地が異教徒に占領され、その地のイスラム教徒が異教徒による弾圧や迫害に抵抗できずにいるのならば、モハメッドの教えに従って躊躇せずにその地へ移動しなければならない、自分の故郷に留まることは許されない、というものだった。これは暗に東にある中国に向かって進み、雲南貴州の境を超えて東南アジアへ移動し、最終的に西アジアや南アジアのムスリム国家に達するという道筋を意味している。

 最も異常なのは、こうした連中が半ば公然とムスリム国家へ「移動」するように大声で呼びかけている点だ。移動後は国際的な聖戦組織に加わってイスラム世界の国際的大「聖戦」を支援し、この世界における最大の敵であるサタン「アメリカ及び西側諸国」に対する「聖戦」を呼びかけているのだという。

 しかも、彼らが特に強調しているのは、本物のイスラム教徒なら自分の祖国のことなど考えるべきではないということらしい。つまり、自分の祖国のためだけに戦うイスラム教徒は敬虔なイスラム教徒ではなく、東トルキスタンなどという名称は忘れた方が良いということだ。そして、先ずは人類最大のサタンである「アメリカと西側諸国」に対して「聖戦」を遂行し、最終的にイスラム教徒の地を解放するのだという。

 私は老人に疑問を投げつけた。「東トルキスタンには共産党密偵が潜り込んでいる。彼らは逮捕されて宗教原理主義者として銃殺されるのを恐れていないのか?そんなにも度胸があるのか?そんなに大っぴらに宣伝活動をしても全然怖くないっていうことか?」

 老人の答えはこうだった。「問題の鍵はそこじゃよ、イリシャットさん。連中は共産党を恐れていないだけじゃなく、半ば公然と宣伝活動をしているんじゃ。しかもおかしなことに、共産党の警察も密偵も連中のことを全然気にかけてないようなんじゃ。」

権謀術数が得意な中国共産党

 老人はさらに続けた。彼とその他の何人かのウイグル学者たちは、なんとかしてこの様な原理主義的宣伝活動をやめさせなければならないとおもい、密かに何人かの弟子たちを派遣して、人々に連中の宣伝内容を安易に信用して自分の故郷を捨てないように説得させた。聖なる行為としての「移動」にも条件があり、自分の祖国を守ることこそ全てのウイグル人イスラム教徒の義務なのだ。ウイグル人を迫害したり弾圧したりしているのは中国政府であり、決してアメリカや西側諸国ではないのだと。

 老人の弟子たちが説得を初めて二三日も経たないうちに、警察が彼らを逮捕し始めたという。老人は連中の奇妙なところはこういうところにも現れていると語った。特に老人が強調したのは、警察に逮捕されたのは老人の弟子たちだけで、「移動」や「聖戦」を大声で呼びかけていたあの連中に対しては、中国共産党の警察は見て見ぬふりだったということだ。

 中国共産党の警察の中のあるウイグル人警官が、老人の弟子の一人に、「移動」や「聖戦」の宣伝活動をやっている連中の邪魔をして面倒に巻き込まれてはいけない、と密かに告げたという。これを聞いて老人もピンときて、連中の特別な背景がわかったという。連中は誰かの指令を受けてウイグル人イスラム教徒に対する原理主義的宣伝活動をしているのだ。

 私はこれを聞いてびっくりしてしまい、信じられない思いで、こうつぶやいた。「何ていうことだ、そんなことあり得るだろうか?まさに『道高一尺、魔高一丈(※)』、中国共産党政権って奴は本当に権謀術数のやり手たるに恥じない連中だ!」

 ※『道高一尺、魔高一丈』は、辞書的には“正義の力が強くなれば、邪悪の力も強くなる”ですが、ここでは中国共産党の悪辣な手段が手を変え品を変えて酷いものになってくことに驚きあきれている感じの表現として使われていますね。

 老人は最後にこう締めくくった。「イリシャットさん、私があなたにこういう話をするのも、あなた方に気をつけてもらいたいからなんじゃ。私たちの敵の力は強大だ。だから事の表面的な現象だけに振り回されないでほしいのじゃ。私たちは往々にして単純すぎる。特に一部の若い者たちだ。若くて血気盛んで、簡単に敵に利用されてしまう。原理主義の宣伝をしていた奇妙な連中の後ろには、中国共産党による驚愕すべき大陰謀が隠されているんじゃ。ウイグル人には再び大きな災いが降りかかってきているんじゃよ。」

(本文は2014年7月9日博訊新聞ネットに発表されたもの)
--------------------------------------------------------------------------------------------------

 何となく、にすぎませんが、現在メディアが大騒ぎしている旧統一教会騒ぎも、何らかの裏があるのではないでしょうか。私自身は特に情報を持っているわけではないので、あくまで、そんな感じがする、という以上のものではありませんが。